2014年11月11日

建築を教えます その二

今日は寒いです!!!
山は深い霧に包まれています。
足元には電気ストーブ。今日からファンヒーターも登場(泣)
そんな悲しい「室内環境」などについても今日は語って
行きたいと思うのであります。

前回の「その一」では、間取りについて解説しました。
教科書に載っているようなセオリーではなく、私、
独自の考え方を中心にお話しました。
今日は、間取りが出来上がったので、それを「カタチ」に
してゆく作業について、お話して行こうと思います。

前回「居間」と「食事室」について触れましたが、大概の
住宅の計画であれば、このふたつの居室が最も面積が
広くなると思います。大勢で使う場所ですから当然ですね。
よく「LDKは20畳以上欲しいなぁ~」なんて
クライアントの皆さんは、仰られますね。
この「20畳」なんですが、大変に曖昧な「言い回しです」(笑)

ちょっと計画の話に戻ってしまいますが、この「広さ」に
ついて話すときに「~畳」と「畳の数」で言い表すのは
日本特有です。畳は、おおよそ91㎝×182㎝で考えています。
ですが、実際には、それよりも大きくなったり小さくなったりします。
日本では「~間(けん)」という独特な寸法で広さを
表したりもします。

1間は1.82mです。2間は3.64mです。「さんじゃく」「ろくしゃく」
などという言葉も「木造建築」では頻繁に使われます。
1尺は30㎝です。3尺は91㎝のことを言います。6尺は、つまり
1間のことを言います。
先ほど出てきた8畳間は「3.64m×3.64m」、つまり2間×2間です。
6畳間であれば「3.64m×2.73(1間半)m」になります。

このように建築士、特に木造を得意として日々設計を
しているものであれば1尺の倍数、1.5尺の倍数、91㎝の倍数、
~間が、何メートルなのかを瞬時に言い換えて仕事をしています。
で、なければ仕事になりません。

今日お話しする「カタチ」は構造についてです。
まだ格好の事は話しません(笑)
実は、どのような「格好」にするにしろ「作れない事には始まらない」
ので、意匠を検討するときに同時に構造をイメージする事が
出来ないものは建築士とは呼べません。
ここが「素人」と「プロ」の決定的な違いなのです。


クライアントは30畳の、デッカイリビングが欲しいと言います。
しかもコストを掛けないで。つまりは木造でと言いたいのでしょう。
これは、中々大変なことになります。
一般的に建築に使われる構造材料は「木材」「鉄」「コンクリート」です。
コンクリートは単体で使用される事はありません。
つまり鉄筋コンクリート、鉄骨コンクリート造で作られます。

そこへ行くと木材と鉄は単体での使用が基本です。
その特徴は全く違います。
木材は「比較的軽量」「コストが安定している」「加工性が高い」
などの理由から「小規模の建築」に採用される事が多いです。

それに対して鉄、つまり「鉄骨」は「単位重量が重い」「コストが安定しない」
「加工が困難」「精度を出すのが大変」「熱に弱い」など
木材に比べるとデメリットばかりが目立ちます。


それでは「なぜ」鉄骨は建築に使われるのでしょうか?
答えは「高い靭性(じんせい)」「高強度」を持っているからです。
熱に対しての変形能力が低いのが鉄ですが、火災時の対策(防火被覆)を
すれば、「大空間」「超高層」の建築を可能としてくれる材料です。
ですから鉄骨造は「大規模な建築」に採用される事が多いのです。

でもどうでしょう?
昨今では(随分前からですけど)鉄骨造を住宅に採用することを
希望される施主の方が増えているようですが。
また「木造住宅は地震に弱い」などとも言われているようですが。
地震に弱い木造住宅。完璧な「風評被害」です。
素人は「まことしやか」な囁きに簡単に騙されます。
乗せられます。

確かに木造住宅は強度に対して欠点を持っています。
時々私のブログでも登場する「接合部」です。

しかし、これをクリアすれば鉄骨造や鉄筋コンクリート造に
比べて、「遥かに」「住宅建築に有利」な構造だと言えるのです。


鉄は建築に採用するには様々なネガティブを解決しなければ
なりません。建築のコストを大幅に引き上げます。

それでも必要になる時があります。それは「大空間」です。
では「大空間」とは、どれくらいの広さを言うのでしょうか?
「大きい」「広い」などの言葉は大変に曖昧で、人によって
感じ方は様々です。私たち建築士は、その「曖昧な広さ」を
「一つの長さ」を持って判断しています。まさに「尺度」です。


木造であれば「短辺方向(梁間方向)が4.55mを超える場合」
これは大空間だと考えるのが一般的です。2間半ということです。
私は5.46m以上の梁を木造で設計したことがあります。無い事ではありません。
これは、ひとえに「混構造の構造計算の厳格化」と「コスト偏重」の
成せる結果だと思います。


そんなに長い梁を飛ばすなら、最初から鉄骨造で計画すれば良いと
言われそうですが、たったの「ひと空間」だけのために全体を
鉄骨ラーメン構造にするのは「やるせない」気持ちになります。
木造で4.55mを超える梁を計画するのは、賢い計画ではありません。
仮に途中で柱を入れたとしても、それは単に「たわみ」を抑える
方策に過ぎません。柱が「筋違(すじかい)」などの変形を抑える
部材で支えられていなければ、地震が起きた時には脆性(塑性)的な
崩壊を招きかねません。

それから短辺方向を4.55mにしても長辺方向(桁行方向)が
7.28m、つまり4間を超えるような計画も駄目です。
これを計算すると33.124㎡。つまり10坪、20畳と言うことに
なります。これを超えた計画を実施するには「コストアップ」は
絶対に避けられないということになりますね。

ですから「平面計画」が大切になるのです!!

わざわざ太陽光発電まで採用して、OMソーラーにしても
大空間を空調する設備と電気代、ガス代などで使い切ってしまえば、
本末転倒になってしまうのです。
高断熱、高気密ですとか、耐震構造などは、「基本が出来て」
初めて生きてくるものなのです。


ハリウッド映画に出てくるような、セレブの豪邸のリビングは
庶民には高嶺の花です。その映画でも、生活感の無い「だだっ広い」
リビングに登場する主役は大概「寂しい」「孤独」「家庭不和」に
悩まされているなんてことが多いはずですが。
大切な事は「空間が狭く感じない事」「窮屈でない事」
「ソシオペタル(親密)であること」なのです。


仮に鉄骨造だとしてもなのです。
広さは計画段階では「あくまで目安」であること。
それよりも「どのように空間で過ごすか」をイメージすることが
計画では大切になります。最優先の検討事項です。

先ほどから出ている「梁」という部材ですが、これは基本的には
「床を支える」または「屋根を支える」材料です。

よく「梁が太いから丈夫な家だ」などと仰る方がいます。
確かに丈夫なのですが、梁が太いからといって地震に強い家とは
呼べないのです。梁は建物が変形する時に「つっぱる」役目を
することはしますが、それは変形能力を検討するときには低い役目です。
あくまで「垂直方向の荷重」を支える役目なのです。

今から住宅を建てよう!と検討している方は、この構造種別で
結構悩まれていると思います。
選定に当たって忘れてはならないのが、ツーバーフォーであれ、
在来工法であれ、軽量鉄骨造であれ、重量鉄骨造であれ、RC造であれ、
「行き過ぎた間取りの計画は構造を圧迫する」ことです。


見積もりを出すまでもなく、先ほど述べたように「コストアップ」に
つながりそうな要求になった場合には、再度「平面計画」つまり
「個人個人の暮らし方」「みんなの暮らし方」に戻って
話し合いの輪を持つ事が住宅設計には肝要なのです。

実は再三申し上げている「暮らし方」についての提案力は
選ばれた建築家だけが持っている才能でもあります。
家作りに失敗したくない方は、是非、設計事務所へのお問い合わせを
されることをお勧めいたします。
そうそう!いの一番は「URBAN GEAR」までどうぞ!!(笑)

PS:次回「その三」では、お待ちかね「高断熱・高気密」あたり
でしょうか。お楽しみに!

atelier@urbangeardesign.com
http:www.urbangeardesign.com

054-206-4343


建築家 本多 信章さんの家づくりプロフィール

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Posted by アーバンギア at 16:51│Comments(0)建築
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